コーヒーは、世界の70か国以上の国々で生産されています。
世界の国々の3分の1の国が、第1次産品であるコーヒーを生産しているということで、それだけの需要が存在しているのだと思います。
アルコール飲料を除く世界の三大嗜好飲料であるコーヒー、茶、ココアですが、コーヒーはアカネ科、茶はツバキ科、ココアはアオギリ科の植物です。
それぞれが、人類との長い歴史的経緯を持っているのですが、特に、コーヒーについては、三者の中でも普及が目覚ましくて、地球全土にくまなく浸透しています。
『20世紀版、エカワ珈琲店の珈琲読本、(第1章)コーヒーノキ』は、前遍と後編に分けて記事を掲載していて、この記事は前遍です。
後編は、下のリンク先ページの記事です。
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『エカワ珈琲店の珈琲読本、(第1章)コーヒーノキ』は、1990年代に年老いた珈琲豆焙煎屋が20世紀に出版された珈琲関係書籍を参考書としてコーヒーの学習をしていた頃の学習ノートみたいなものです。
2023年の現在では、相当に時代遅れになっていてる記事だと思っています。
コーヒーノキ
コーヒーという飲み物は、コーヒーノキと呼んでいるコフィア属の潅木(低木)に成る果実から始まっています。
コフィア属には幾つもの種がありますが、そのうち商業的に重要なのはアラビカ種とカネフォラ種(通称ロブスタ)です。
コーヒーノキは、主に熱帯・亜熱帯地域に属する70カ国以上の国々で栽培されています。
コーヒーノキは、アカネ科の植物で常緑の熱帯性低木です。
学名はコフィア・アラビカ(Coffea arabica)、和名はアラビカ・コーヒーノキと命名されています。
コフィア属には幾つもの種(50種or60種)がありますが、そのうち商業的に重要なのは、アラビカ種とカネフォラ種(通称ロブスタ種)です。
栽培種の75~80%を占めていて、品質評価も高いのがアラビカ種です。
あまり人気が無いのですが、アラビカ種とロブスタ種以外の有用品種として、リベリカ種、エクセルソ種、モーリティアナ種、ラセモサ種などが知られています。
アラビカ種の原産地は、エチオピアの南西高地(アビシニア高原)、スーダン南東部のボマ高地、ケニア北部のマーサビット地区だと考えられているようです。
カネフォーラ種(ロブスタ)は、サブサハラアフリカ(サハラ砂漠より南のアフリカ)、アフリカの西部と中心部、ギニア、ウガンダ、南スーダンが原産地だと考えられています。
樹高は6~8メートルで、自生ではもっと伸びるということですが、栽培種は管理が簡単になるように2~3メートルに剪定されているそうです。
コーヒーノキは、種をまいてから、3~5年で実をつけます。
コーヒーノキには、長さ1cm程度の可憐な白い花が咲きます。
そして、ジャスミンに似たあまく爽やかな香りを放つと言われています。
アラビカ種は、自家受粉です。
同じ遺伝子を持つ種子による繁殖ですから、発芽した苗木は、大体において均一です。
そして、先祖となるコーヒーノキと、ほぼ同じ性格を持つコーヒーノキが誕生します。
カネフォラ種、エクセルソ種、リベリカ種は、他家受粉です。
同種の異なる遺伝子で受粉するわけですから、ハイブリッド(異なったものを混ぜ合わせること)によって、環境の変化に強い植物を増やすことも可能です。
雑種性の強いハイブリットのコーヒーノキは、カッティング(挿し木)、接ぎ木、出芽という、通常の栄養繁殖による方法で繁殖させます。
また、人工的に、優秀なハイブリッドを作り出す努力も続けられています。
枝につく果実は、はじめ緑色で、それから数ヶ月くらいで黄色く色づき、成熟するにしたがって赤みを増していきます。
果実の収穫可能年数は、大体、20年~20数年だと言われています。
葉は、通常、長さが10~15cm、幅は6cmくらいで、光沢のある濃い緑色をしています。
花は腋生(エキセイ)で、葉の付け根から、香りの良い白い花がいっせいに群がり咲きます。
続いて、約1.5cmの楕円形の果実がコーヒーノキの枝に多数着生します。
果実は初め緑色で、それから黄色く色づき、完熟すると真っ赤になります。
果実の成熟には、7~9ヶ月が必要です。 そして、乾燥すると黒くなります。
コーヒーの果実の種子が、コーヒー豆です。
コーヒーノキの果実は、サクランボに似ているので「コーヒーチェリー」と呼ばれています。
コーヒーの果実は直径1cmほどの球状で、甘味のある果肉の中に、普通、2個の半円形の種が向き合って入っています。
これを、フラットビーンと呼んでいます。
しかし、全体の10%ほどですが、丸い種子が1個だけの果実もできます。
この果実に1個だけ入っている丸い種子を、ピーベリーと呼んでいます。
コーヒー豆は、果実の外皮、果肉(パルプ)、内果皮(パーチメント/繊維質の中皮)、さらにシルバースキンという銀色の薄皮に包まれています。
栽培種
コーヒーノキには、数十種類以上の「種」が確認されています。
そのうち、現在、商業的に栽培されているのが、アラビカ種とロブスタ種です。
栽培に占める割合は、アラビカ種が約8割、残りの約2割がロブスタ種(カネフォラ種)で、その他に、ほんの少しだけリベリカ種が栽培されているようです。
20世紀の時代、ほんの少しだけ栽培されているリベリカ種も加えて、アラビカ種、ロブスタ(カネフォラ)種、リベリカ種を三大原種と呼んでいました。
単位面積当たりの収穫量は、1ヘクタールについて、アラビカ種は約330kg、リベリカ種は約450kg、ロブスタ種は約810kgだと報告されています。
アラビカ種は、エチオピア原産で、古くからアラビア半島で栽培されていたコーヒーノキが、世界各地に移植されて栽培地域が広がって行ったと言われています。
現在、世界で最もたくさん栽培されているのがアラビカ種で、コーヒー豆総生産量の約80%を占めています。
アラビカ種は品質価値が高くて風味にすぐれているのですが、強烈な日照や高温に弱く、病虫害にも弱いという欠点があります。
平均気温15~25度、標高500m以上の高地の傾斜地での栽培が適しています。
高地栽培のため、多くの労働力を必要とします。
アラビカ種には70種類以上の品種があって、代表的なものとして、ティピカ、ブルボン、カトゥラ、ムンドノーボ、カトゥアイ、マラゴジベ、アマレーロ、カティモールなどがあります。
ロブスタ種は、カネフォーラ種の代表的な一変種ですが、現在では、カネフォーラ種=ロブスタ種ということで、カネフォーラ種のことをロブスタ種と呼んでいます。
19世紀末、ペルギー人科学者エミールローランが、アフリカのコンゴ盆地で発見した品種です。
世界総生産量の約20%を占め、低地での栽培が可能で、成長が早く栽培管理に手間がかからないという特徴があって、病虫害に強く収量も多いのですが、風味・品質がアラビカ種よりも劣っているようです。
淡白な香味のコーヒーだと思いますが、水溶性成分の量やカフェインの抽出量が他の品種に比べて多いので、アラビカ種とのブレンド用やインスタントコーヒーの原料として重宝されているようです。
リベリカ種は、コンゴでロブスタ種が発見されたのと同じころ、アフリカ西海岸のリベリア共和国で発見された、樹の高さが約10mにも達する頑健なコーヒーノキです。
低地でも育ち、病虫害におかされにくく、高温・多雨・少雨・干害に強い繁殖力の旺盛なコーヒーノキだと言われています。
しかし、味・香りといった品質が劣るということで、現在では、ほとんど栽培されていないようです。
アラビカ種
植物学者リンネが命名したアラビカ種は、アビシニア(エチオピア)が原産地で、古くから対岸のアラビア半島南部で栽培されていたコーヒーノキが、世界各地に移植されて、栽培地域が広がって行ったと考えられています。
アラビカ種は、コーヒー豆世界総生産量の約80%を占めている品種です。
樹の高さは、5~6メートル、葉は10~15cmぐらいで、葉の表面は濃緑色です。
栽培には、気温15度~25度、標高500~2000mの傾斜地が適しています。
また、強い日差しを嫌うので、日よけとしてバナナやとうもろこしなどをコーヒーの樹と一緒に植えたりしています。
アラビカ種は、他の品種と比較して、香味が最も優れていて品質価値が高いのですが、低温、高温、多雨、少雨に不適で、病虫害に弱くて耐病性が低いという欠点を持っています。
果実は楕円形で、熟した果実は落下しやすくて、植え付け距離はロブスタ種の1.5倍、リベリカ種の2倍を必要とします。
発芽までに6週間、約3年で開花しますが、経済的に収穫できるようになるまで5年必要です。そして、収穫できる期間は、長くて30年ぐらいです。
収穫できるようになるまでの期間は、ロブスタ種の3年に比べると、2年遅くなります。また高地栽培のため、どうしても多くの労力が必要になります。
アラビカ種の代表的な栽培種として、ティピカ、ブルボン、カトゥラ、ムンド・ノーボ、マラコジペ、アマレーロ、カトゥアイ、カティモールなどがあります。
生産地域が世界各国に拡散しているので、各地の栽培形態、栽培事情を反映してコーヒー品質が多様化しています。
アラビカ種の主な品種
アラビカ種の代表的な品種として、ティピカ(Tipica)、コムン(Comum)、アマレーロ(Amarelo)、ブルボン(Bourbon)、カトゥラ(Caturra)、ムンド・ノーボ(Mundo novo)、カトゥアイ(Catuay)、マラコジーペ(Maragogiepe)、カティモール(Catimor)などが知られています。
伊藤博さんの「珈琲を科学する/時事通信社」には、ティピカ(Tipica)とブルボン(Bourbon)が形態上の二大変種と考えられている伝統的品種で、この何れかまたは両方の交雑種、突然変異種が多くの品種の元であると記述されています。
(1)ティピカ種
1700年頃、オランダが、インド産のコーヒーノキをインドネシア・ジャワ島に移植して、栽培に成功しました。
そして、1706年、このジャワ島の苗木が、オランダ本国の植物園に送られて、たった1本だけ生育しました。
そのコーヒーノキの2代目がフランスに贈られて、その後、カリブ海の島に移植されました。
そのコーヒーノキを先祖とする品種群のことを、ティピカ種と呼んでいるのだと思います。
アラビカの原種に近い品種で、中南米で広く栽培されている長形の豆で風味良好ですが、さび病に弱くて生産性に劣る品種だとも言われています。
(2)ブルボン種
マダガスカル島とモーリシャス島の間にあるインド洋の島、ブルボン島(現在はレユニオン島)に、18世紀のはじめ頃、フランス人の手によってコーヒーノキが移植されました。
このブルボン島のコーヒーノキが、ブラジルに移植されてできた品種群です。
ブラジル・サントスの名前で有名です。
伊藤博さんの「珈琲を科学する/時事通信社」には、ブルボン島原産、ティピカの突然変異で出来た小粒丸みの豆で長S字形のセンターカットを持つ、香りが良くて収穫率もかなり高い品種だと記述されています。
(3)アマレーロ
通常、コーヒーの果実は、成熟すると赤色になります。
しかしアマレーロは、果実が黄色に熟する変った品種です。
カトゥラ・アマレーロだけでなくて、カトゥアイ種にも、果実が黄色くなるものがあるそうです。
伊藤博さんの「珈琲を科学する/時事通信社」は、カトゥラ・アマレーロがブルボンの優性突然変異種でブルボンに似ていて、ブラジル、コロンビアなどで栽培されている黄色の果実をつける品種だと記述しています。
(4)カトゥラ
ブルボン種の突然変異種、1915年、ブラジルのミナス・ジェライス州で発見されました。
標高700m以上の高地での栽培に適し、直射日光やさび病に強い品種です。
豆は小粒で、多産で隔年結実になりやすいということです。
(5)ムンドノーボ
1943年、サンパウロで発見され、その後、改良が施されて、1950年頃から、ブラジルで栽培されるようになった品種です。
ブルボンとスマトラを交配させて改良を施した品種で、ブラジルを代表する多収穫の品種ですが、樹高が伸びすぎるという欠点があります。
霜に強くて、環境適応性、耐病性が大きくて、果実も大きい品種だと言うことです。
(6)カトゥアイ
ムンド・ノーボの樹高を抑えるために、カトゥラと交配させて品種改良した品種です。
樹高が低く病虫害にも強い、成長の早い生産性の高い品種です。
中南米各国で、広範囲に栽培されています。
(7)マラコジペ
ブラジルのバイア州マラゴジベで1870年に発見された、アラビカ種の突然変異種。
樹高・葉・果実ともに大きく、種子の大きさは、アラビカ種の中で最大ですが、風味がやや劣るとも言われていて生産性の低い品種です。
ティピカの優性突然変異とも考えられているようです。
(8)カティモール
耐病性のあるティモール(アラビカ)とカトゥラを、人工的に交配させたサビ病耐性の強いハイブリット(混血)。
病気に強くて、高収量のコフィア・アラビカの新品種。アラビカ種のコーヒーノキ。
ポルトガルで1959年に作られた、サビ病に抵抗力を持つティモールコーヒーとカトゥラコーヒーの雑種。
成熟するのが早くて、商業用として栽培されている他の品種のコーヒーと同等か、それ以上の生産性を持っているとされています。
他の品種のコーヒーノキと比べて、低い高度の地域でもよく成長するのですが、標高1500メートル以上の高い高度の地域での栽培には不向きだとも言われています。