コーヒーは、南北回帰線の内側の70か国以上の国々で生産されています。
世界の国々の3分の1の国が、第1次産品であるコーヒー豆を生産しています。
コーヒーには、それだけの需要が存在しているということになります。
アルコール飲料を除く世界の三大嗜好飲料であるコーヒー、茶、ココアです。
コーヒーは、その三者の中でも普及が目覚ましくて、地球全土にくまなく浸透しています。
【目次】
【1】コーヒーノキ
コーヒーノキは、主に、熱帯、亜熱帯地域に属する70カ国以上の国々で栽培されています。
コーヒーノキは、アカネ科の植物で常緑の熱帯性低木です。
コーヒーノキの中で商業的に重要なのは、アラビカ種とカネフォラ種(通称ロブスタ種)です。
栽培種の75~80%を占めていて、品質評価も高いのがアラビカ種です。
アラビカ種は自家受粉、ロブスタ種は他家授粉です。
アラビカ種の原産地は、エチオピアの南西高地(アビシニア高原)、スーダン南東部のボマ高地、ケニア北部のマーサビット地区あたりだと考えられています。
ロブスタ種の原産地は、サブサハラアフリカ(サハラ砂漠より南のアフリカ)、アフリカの西部と中心部、ギニア、ウガンダ、南スーダンあたりだと考えられています。
【2】栽培種
コーヒーノキには、数十種類以上の「種」が確認されています。
そのうち、商業的に栽培されているのが、アラビカ種とロブスタ種のコーヒーノキです。
栽培に占める割合は、アラビカ種が約8割、残りの約2割がロブスタ種で、その他に、ほんの少しだけリベリカ種が栽培されているようです。
20世紀に発行された珈琲本には、ほんの少しだけ栽培されているリベリカ種も加えて、アラビカ種、ロブスタ種(カネフォラ種)を三大原種と書いてありました。
21世紀に発行された珈琲本には、アラビカ種とロブスタ種が二大栽培種だと書いてあります。
【3】アラビカ種
アラビカ種は、アビシニア(エチオピア)が原産地で、古くから対岸のアラビア半島南部で栽培されていたコーヒーノキが、世界各地に移植されて、栽培地域が広がって行ったと考えられています。
アラビカ種は、他の品種と比較して、香味が最も優れています。
しかし、高温に弱くて、病虫害にも弱いという欠点があります。
アラビカ種の主な品種
アラビカ種の代表的な品種は、以下の品種です。
(1)ティピカ種
1700年頃、オランダが、インド産のコーヒーノキをインドネシアのジャワ島に移植して、栽培に成功しました。そのコーヒーノキを先祖とする品種群。
(2)ブルボン種
ブルボン島(現在はレユニオン島)のコーヒーノキが、ブラジルに移植されてできた品種群。ブラジル・サントスの名前で有名。
(3)アマレーロ
果実が黄色に熟する品種です。
(4)カトゥラ
ブルボン種の突然変異種。
標高700メートル以上の高地での栽培に適し、直射日光やさび病に強い品種です。
(5)ムンドノーボ
ブルボンとスマトラを交配させて改良した品種で、プラジルを代表する多収穫の品種ですが、樹高が伸びすぎるという欠点があります
(6)カトゥアイ
ムンド・ノーボの樹高を抑えるために、カトゥラと交配させて品種改良した品種です。
(7)マラコジペ
ブラジルのバイア州マラコジペで1870年に発見された、アラビカ種の突然変異種。
樹高、葉、果実ともに大きく、種子の大きさは、アラビカ種の中で最大。
(8)カティモール
耐病性のあるティモール(アラビカ)とカトゥラを、人工的に交配させたさび病耐性の強いハイブリット(混血)。
ロブスタ種
19世紀の末、ペルギー人科学者エミール・ローランが、アフリカのコンゴ盆地で発見したと伝えられています。
ロブスタ種は、学名「カネフォラ種ロブスタ」と命名されている品種で、コーヒーに最大の被害を及ぼす「葉さび病菌(ヘミレア)」に対する強い抵抗力を持っていると言われています。
栽培適地
コーヒーノキの栽培には、肥沃な水はけの良い土壌が必要だと言われています。
また、年間を通じて平均した気温と降雨量、適度な日陰や冷気などの様々な条件が必要になるようです。
その条件を満たすのが、南北回帰線の間の熱帯地方で、コーヒーノキの栽培適地だと考えられています。
世界各地のコーヒー産地は、赤道を挟んで南・北緯25度の地帯(熱帯地域)にあります。
この地域を、コーヒーゾーンまたはコーヒーベルトと呼んでいます。
コーヒーノキの病気と霜害
コーヒーの病気は、知られているだけで300数十種類を超えていると思われます。
その中でも、最も大きな被害を及ぼしている最悪の病気は、さび病菌「ヘミレア(Hemileia vastarix)」による葉さび病(Coffee Leaf Rust)だと言われています。
1861年、アフリカのビクトリア湖周辺で発見されたコーヒー葉さび病は、アジア、アフリカで栽培されていたアラビカ種のコーヒーノキに多大な被害をもたらしました。
コーヒーノキの天敵は、コーヒーノキの病気だけではありません。
高地で栽培されるコーヒーにとって一番恐ろしいのは、霜による被害です。
僅か一晩の霜のために、栽培地域全域が壊滅的な被害を受けます。
1975年、ブラジルでは、この霜害で20億本の木のうち、15億本が被害を受けて、生産が半減してしまいました。